連絡事項、作品への言い訳、どうでもいい日常などなど・・・。
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3.核心
「お前ならどうする?」
それは、唐突な問いだった。
「え?」
突然の主の問いに、六太は反射的に首を傾げた。
「たとえばお前だったら、どの道を選ぶ?」
何が?と逆に問いたかった。
けれど問わずとも、その意に六太はすぐに気づいてしまった。
いっそ何も悟れず気づけぬぼんくらであったなら、いろいろな気苦労など背負わずに済むのに。
そんな詮無いことを頭の片隅で考えたとき、主は何一つ飾らず、さらりと核心に迫る言を発した。
「俺が、お前に誰かを殺して来いと言ったら、お前ならどうする?」
ドクン、と六太の心臓が大きく鳴った。
何を馬鹿なことを、と一蹴するにはまだ、その記憶は生々しすぎた。
「お前が俺のたった一言でどれほど苦しむのか知っていても、血の穢れによる病に臥せるだろうことを知っていても、たぶんそのときには、俺はひとかけらの迷いもなく”やれ”と言うだろう。そうしたらお前はどうする?」
主の執心に抗うことができず、病に蝕まれていった彼女の最期の姿は、ひどく哀れで痛々しかったが、それを他人事だと思える麒麟はきっと存在しないだろう。
六太は、思わず拳を握り締めた。
そんなことを聞かされるだけでも気分が悪くなってくるということを、分かっていて尚隆はなお、問うている。
「のた打ち回るほどの苦痛を抱えてでも、麒麟の本能によって、その理不尽な言に従うか?それともこいつはもうだめだと見限って、この国の民への慈悲によって、俺を玉座から引き摺り下ろさせるか?」
確かめたいのだ。
尚隆は。
己の最期を。
―――いや、違うな。
俺の覚悟を、だ。
尚隆を王に選んだのは六太だ。
それは、この国の行く末に責任を持ち、最期を見届ける義務があるということ。
そんなことは分かっている。
生まれてから死ぬまで、六太は雁国の麒麟であり宰輔なのだ。
尚隆の表情は、あくまでも穏やかだった。
微かに口元に笑みさえ浮かべて頬杖をつく主は、まっすぐに半身の目を見つめていた。
「俺は・・・」
その視線は、六太の答えを疑わないと告げている。
―――そんなん、ずるいだろ・・・。
六太は、そっと唇を噛んだ。
言うべき答えは一つだ。
尚隆の欲しい答えは、よく分かっている。
だけど、もし本当にそうなったとしたら、実際のところ自分はどうするだろう?
尚隆の欲しい答えを、迷わずに選べるだろうか?
けれど、そんな逡巡さえ尚隆は必要としていなこともまた、よく分かっている。
だから、六太はわざとそっけない口調で言った。
「んなこと今更聞かなくたって、分かってるだろ、お互い」
―――今はまだ、迷う必要なんかないんだ。
尚隆が望む答えを望むがままに与えてやればいい。
それが今の六太の義務なのだろう。
薄紫の瞳をしっかりと主へと向け、一言一言区切るように六太は義務を果たす。
「安心しろよ、そのときは、ちゃんと―――」
その答えが、今、この国の、この二人の、核心となるのだから。
ー了ー
COUNT TEN.様からお借りしたお題を使用しています。
尚隆と六太の核心。
月影の塙麟の最期はどんなだったっけ?と、もうそんな感じで十二好き失格です(^^;)アニメの塙麟のイメージが強くって。
「お前ならどうする?」
それは、唐突な問いだった。
「え?」
突然の主の問いに、六太は反射的に首を傾げた。
「たとえばお前だったら、どの道を選ぶ?」
何が?と逆に問いたかった。
けれど問わずとも、その意に六太はすぐに気づいてしまった。
いっそ何も悟れず気づけぬぼんくらであったなら、いろいろな気苦労など背負わずに済むのに。
そんな詮無いことを頭の片隅で考えたとき、主は何一つ飾らず、さらりと核心に迫る言を発した。
「俺が、お前に誰かを殺して来いと言ったら、お前ならどうする?」
ドクン、と六太の心臓が大きく鳴った。
何を馬鹿なことを、と一蹴するにはまだ、その記憶は生々しすぎた。
「お前が俺のたった一言でどれほど苦しむのか知っていても、血の穢れによる病に臥せるだろうことを知っていても、たぶんそのときには、俺はひとかけらの迷いもなく”やれ”と言うだろう。そうしたらお前はどうする?」
主の執心に抗うことができず、病に蝕まれていった彼女の最期の姿は、ひどく哀れで痛々しかったが、それを他人事だと思える麒麟はきっと存在しないだろう。
六太は、思わず拳を握り締めた。
そんなことを聞かされるだけでも気分が悪くなってくるということを、分かっていて尚隆はなお、問うている。
「のた打ち回るほどの苦痛を抱えてでも、麒麟の本能によって、その理不尽な言に従うか?それともこいつはもうだめだと見限って、この国の民への慈悲によって、俺を玉座から引き摺り下ろさせるか?」
確かめたいのだ。
尚隆は。
己の最期を。
―――いや、違うな。
俺の覚悟を、だ。
尚隆を王に選んだのは六太だ。
それは、この国の行く末に責任を持ち、最期を見届ける義務があるということ。
そんなことは分かっている。
生まれてから死ぬまで、六太は雁国の麒麟であり宰輔なのだ。
尚隆の表情は、あくまでも穏やかだった。
微かに口元に笑みさえ浮かべて頬杖をつく主は、まっすぐに半身の目を見つめていた。
「俺は・・・」
その視線は、六太の答えを疑わないと告げている。
―――そんなん、ずるいだろ・・・。
六太は、そっと唇を噛んだ。
言うべき答えは一つだ。
尚隆の欲しい答えは、よく分かっている。
だけど、もし本当にそうなったとしたら、実際のところ自分はどうするだろう?
尚隆の欲しい答えを、迷わずに選べるだろうか?
けれど、そんな逡巡さえ尚隆は必要としていなこともまた、よく分かっている。
だから、六太はわざとそっけない口調で言った。
「んなこと今更聞かなくたって、分かってるだろ、お互い」
―――今はまだ、迷う必要なんかないんだ。
尚隆が望む答えを望むがままに与えてやればいい。
それが今の六太の義務なのだろう。
薄紫の瞳をしっかりと主へと向け、一言一言区切るように六太は義務を果たす。
「安心しろよ、そのときは、ちゃんと―――」
その答えが、今、この国の、この二人の、核心となるのだから。
ー了ー
COUNT TEN.様からお借りしたお題を使用しています。
尚隆と六太の核心。
月影の塙麟の最期はどんなだったっけ?と、もうそんな感じで十二好き失格です(^^;)アニメの塙麟のイメージが強くって。
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